この映画を観る⑨(20030831)
名監督シリーズ② アルフレッド・ヒッチコック
名監督シリーズの第2回目は、「鳥」や「サイコ」等でみんな知っているヒッチコック監督です。
今でこそヒッチコックが偉大な映画監督であることに異論のある方はいないのですが、僕の理解が正しければ、このヒッチコックの名声は、フランスの天才映画監督フランソワ・トリュフォーに負うところが大きいはずです。
もともとヒッチコックは、そのストーリー・テラーとしての技量は大いに認められていたのですが、彼の作る映画そのものは、いわゆる芸術的なテーマ等と無縁で、そのために評論家等から一段低く見られる傾向にあったようです。
トリュフォーは、ヒッチコックが映画監督として正当な評価を得ていないことに、かねてからどうしても納得ができなくて「ヒッチコック映画術」という、ヒッチコックがいかに卓越した映画監督であるかを理論的・技術的に解明した映画専門書を出版したのでした。
この本や、トリュフォーをはじめとしてヒッチコック監督を尊敬して止まない「フランス・ヌーベル・バーグ」の映画監督達の発言等の影響で、ヒッチコックは本国アメリカでも評価が高まったのでした。
このことは、日本国内では、黒澤明監督より木下恵介監督の方が長い間評価が高かったのと似ています。
「ヒッチコック映画術」の日本語版は、20年くらい前に出版されました。
4千円くらいする高級な本で、学生だった僕には手が出なかったのですが、それでも何とかして手に入れたかったので、当時つき合っていた女性(現在の妻)に「誕生日プレゼント」として買ってもらったのでした。(彼女のお誕生日には、やっぱり僕の欲しかったスティーリー・ダンのレコードを買ってあげました。どっちにしてもお誕生日プレゼントはいつも僕の欲しい物ばかりでしたが、良くできた女で文句一つ言わないのでした。)
今でもちょっと大きな本屋さんにいけばこの本は手に入るはずです。
当時この本を丁寧に読んでいたせいでヒッチコックの映画は、ほとんど全て観ていた気になっていましたが、今回あらためて確認したところ僕が観たことのあるヒッチコック映画は、たった18本でした。
劇場用映画は53本も作っているので、たった3分の1しか観ていないことになります。
ヒッチコックという人は英国人で、1925年から23本は英国で作っています。英国時代の作品は、ほとんどが日本未公開なので、日本公開作品の60%くらいはなんとか観ていることになります。
さて、それでは僕の好きなヒッチコック作品10本を、僕の好きな順に掲げてみましょう。
作品名(製昨年、主演)
・見知らぬ乗客(1951年、ファーリー・グレンジャー、ルス・ロマン)
・汚名(1946年、イングリッド・バーグマン、ケイリー・グラント)
・裏窓(1954年、ジェイムズ・スチュアート、グレース・ケリー)
・バルカン超特急(1938年、マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレーブ)
・サイコ(1960年、ジャネット・リー、アンソニー・パーキンス)
・レベッカ(1940年、ローレンス・オリヴィエ、ショーン・フォンテーン)
・疑惑の影(1943年、ジョセフ・コットン、テレサ・ライト)
・ダイヤルMを廻せ( 1954年、レイ・ミランダ、グレース・ケリー)
・北北西に進路を取れ(1959年、ケイリー・グラント、エヴァ・マリー・セイント)
・めまい(1958年、ジェイムズ・スチュアート、キム・ノヴァク)
僕は「見知らぬ乗客」という映画が、ヒッチコックを知る上では実は最適な映画ではないかと思っています。
観ていただければわかることですが、とにかく実にクールで無駄のない完成された映画です。
ヒッチコックという人は「頭の中で計算したとおり(それ以上でも以下でもない)の映画が作れる」映画監督で、上に挙げた作品は、どれもその名人芸が楽しめる作品ばかりです