これであなたもロック通② (20020722)
クラプトンは神かそれとも悪魔かの巻
ロック通講座の二回目はクラプトンです。
ロック・ミュージックがまだよちよち歩きだった頃、すでに「ギターの神様」と崇め奉られていたあの偉大なエリック・クラプトン様のことです。
今では渋い歌声の白人ブルースマンという印象を持たれる方が多いと思われますが、かつては、あの天才ロックギタリストのジェフ・ベックをして「ボブ・デュランはロック界の詩人、ジョン・レノンはロック界の政治家、ポール・マッカートニーはロック界のメロディメーカー、だけどエリック・クラプトンこそは純粋なギタリストだ」と言わしめた、こてこてのロックギタリストでありました。
もし、僕が「ロックギタリストの中で一番の天才を一人だけ挙げろ」と訊かれれば、「ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)」と0.3秒以内に答えてしまうけれど、「ロックギタリストの中で一番偉大なお方を一人だけ挙げろ」と訊かれれば、迷わず「クラプトン」と答えます。
では、いったいエリック・クラプトンは、どうしてそんなに偉大なのでしょう。
エリック・クラプトンこそロック・ミュージックとロックギターの歴史そのもの
たとえば、かつて、ポピュラーミュージックにおいてギターソロというのは単なる歌のおかずだったわけですが、60年代中ごろ(昭和じゃないよ)クラプトンが下手な歌以上にギターを歌わせてしまったおかげで、みんなが「こりゃすごい、エレキギターという楽器はこんなに表現力が豊かだったのか、なんという可能性のある楽器なんだ!」ということに気づき、急激にロックギター奏法は進歩しました。
そして、クラプトンの弟子たち(クラプトン以降のロック・ギタリストはみんなクラプトンの弟子です)が「我こそクラプトンの一番弟子、これがロックギターだ!」と言わんばかりにギンギン弾きまくっている70年代初めに、彼はもう一歩先に行ってしまって「もっと音楽しようじゃん」って感じで、恋の歌をうたってみたり、サウンドにレゲエを取り入れたりして、ロックの流行を作ってきたのでした。
最近では90年代初めに大ブームになったアンプラグド・ミュージックも彼が火をつけました。アコースティック・ギターでロックをやるのは今じゃ当たり前だけど、それもクラプトンがお手本を見せてくれたからこそっ!てなもんです。
クラプトン様の偉大な歴史についてなら一晩中話していたても飽きない僕だけど、このくらいにしましょう。
いずれにしても「クラプトンを聴かずしてロックギターを語るべからず」です。少なくともロック通を目指すあなたなら「ジョン・メイオールとクラプトン」から「461オーシャンブルーバード」は全て必聴です。
と同時に機会があったら、同時代のギタリストたちの演奏も聴いてみてください。クラプトンの偉大さが身に沁みて理解できるはずです。
ところでクラプトンの愛する人たちはなぜ早死にするのか
ジミ・ヘンドリックス、デュアン・オールマン、スティービー・レイボーン、クラプトン・ジュニアそして元ビートルズのジョージ・ハリソン・・・クラプトンの愛する者は皆クラプトンをおいて逝ってしまいました。もしかしたらクラプトンは、ギターの名人になるためにきっと悪魔に魂を売ってしまったのかもしれません。
さて、最後にクラプトンの名ギターソロが聴ける曲を紹介しましょう。
クラプトンのアルバムの数は膨大だし、彼が他人の曲でギターを弾いているものも含めれば、クラプトン自身見当もつかないくらい多いはずだけど、僕はその中から3曲選びました。機会があったらぜひ聴いてみてください。
恋とは悲しきもの
デレク&ザ・ドミノスです。スタジオ盤じゃなくて、フィルモアのライブ盤に入ってるやつです。このソロは半端じゃなくカッコいいです。僕は高1でフルコピーを試みましたけど挫折しました。
メイク・イット・スルー・トゥデイ
「安息の地を求めて」というアルバムに入っています。 確か発売されたのは僕が中三のときで、当時僕はクラプトンにどっぷり浸かってました。この曲は、歌詞の意味もわからないくせに、ギターソロを聴いて思い切り泣きました。
ランブリン・オン・マイ・マインド
「EC WAS HERE」というライブ盤に入ってるやつです。これも確か中三のとき買いました。それより遥か後にロバート・ジョンソンのオリジナルを聞き、クラプトンとあまりに違うのに驚きました。
このライブの演奏もすごいです。
クラプトンが他の凡百のギタリストと際立って違うところは、スタジオ演奏よりもライブ演奏の方がずっと凄いところです。この演奏なんか聴くと「やっぱり彼は神様だ」と思わずにおれません。