グリム童話に学ぶ、現代で勝ち抜く知恵② (20020721)

 

三人の糸くり女

 

グリム童話から学ぶシリーズの第2回目は「三人の糸くり女」です。

「糸くり女」とは糸をつむぐ女のことです。

グリム童話には職業を持った人がよく出てきます。この糸くり女もそうですが、仕立屋とか指物師とかろくろ職人とか粉屋とか、ほとんどが職人です。さもなくば、魔法使いか王様か家来です。営業マンとか銀行員とか一般事務職といったようなサラリーマンは出てきません。

こういうと、「ほんとにグリム童話が僕(私)らサラリーマンの出世の役に立つの?」という声が聞こえてきそうですが、心配はいりません。時代は変わっても人間社会の基本的ルールや法則なんか、ちっとも変わってないんですから。そのことを今回の「三人の糸くり女」で再確認しましょう。

 

昔あるところに怠け者の娘がいました。

この娘は母親の言うことを聞かず、ちっとも糸をつむごうとしませんでした。母親は怒って娘を引っ叩くと、娘は大声で泣き出しました。

ちょうどそこにお妃が通りかかり、娘の泣くのを耳にして、どうして娘を打ったのかと、母親に聞きました。

すると母親は自分の娘のものぐさを恥ずかしがって、こう言いました、「この娘に糸くりをやめさせることができません。娘は糸くりをしたがっていますが、手前どもは貧乏で、麻を手に入れることができませんので。」

するとお妃はこうおっしゃいました、「あたしは、糸くりの音を聞くことが何よりも好きです。お前の娘をあたしのお城によこしなさい。麻ならたくさんあるから、好きなだけ糸くりをするがいい」。

母親は心底から喜び、お妃は娘を連れて行きました。

 

成功への知恵1.社長※がそばを通りかかったら、無能な部下を思い切り叩いて泣かせてしまえ、泣いている理由を社長に聞かれたら、その部下を徹底的に褒めまくれ。

(※ご自分に都合に会わせ会長、専務、理事、親方、先生等、読替えてください)

 

これほどの知恵には、めったにお目にかかれるものではありません。

 

城に着くとお妃は娘を、三つの部屋に連れていきました。

どの部屋も床から天井まで麻で一杯でした。

お妃は娘に、「さあ、この麻をつむいておくれ、残らずつむいでしまったら、一番上の息子をお前の婿にしてあげるよ」とおっしゃいました。

娘は三百歳まで仕事をしてもやりきれないほどの、あまりの麻の量に途方にくれて、三日間、1人でただ泣いていました。

三日目にお妃が来て、娘が何もしていないのを不思議に思ったけれど、娘は「母親から離れて悲しくて、まだ仕事にとりかかれない」と言い訳をしました。

お妃は、もっともだと思いましたが、帰り際にこうおっしゃいました、「明日は仕事にとりかかっておくれ」。

娘は1人になるとまた途方にくれ、悲しくなって窓の外に目をやると、向こうから女の人が三人やってくるのが見えました。

一人は、幅の広いべったら足

二番目は、あごの下までぶら下がる大きな下唇

三番目は幅の広い親指をしていました。

 

三人の女は窓の下から、どうかしたのかと娘にたずね、娘が困っているわけを話すと、手を貸してあげようと言い、「みんなを婚礼に呼んで、あたしたちのことを伯母さんたちだと言って、お祝いの膳につかせてくれるなら、その麻をすっかりつむいであげよう」と言いました。

娘は「いいわよ」と返事をし、三人を部屋に入れました。

 

成功への知恵2.「できません」とは決して言うな。かといって、できもしないことはするな。好機は必ずくる。その時まで、じっと待て。

 

三人は腰をすえて、糸くりにとりかかりました。

一人が糸を引き出し糸車を踏み、二人目はその糸を湿らし、三人目はそれをぐるぐる回して、指で台をたたきました。

たたく度に見事な糸が下へ落ちました。

娘は、お妃には、三人の女を隠しておいて、つむぎ上がった糸を沢山お見せしたものだから、お妃は大喜びでした。

三人の女は、一番初めの部屋をからにすると、次の部屋に行き、最後に三番目の部屋に来て、それもすっかり片付けてしまいました。

三人の女は暇乞いをして、娘に言いました。「あたしたちに約束したことを忘れるんじゃないよ。お前さんの幸せになることなんだからね」

 

娘がお妃に片付いた部屋と撚糸の大きな山を見せると、お妃は婚礼の支度を始めました。王子もこんな器用な働き者をお嫁さんにすることを喜びました。

娘は王子に三人の伯母のことを話し、婚礼に呼んでくれるよう頼みました。

王子は喜んで承諾しました。

 

さて、式が始まると、妙ななりをした三人の女が現れました。

王子は、幅の広いべったら足の女のところにいって、訊きました「どうして、そんな平べったい足になったのですか」

女は「踏むからさ」と返事をしました。

次は二番目の女に訊きました「どうして、そんな垂れ下がった唇をしているのですか」

女は「舐めるからさ」と返事をしました。

そこで王子は三番目の女に訊きました「どうして、そんなに幅広い親指なんですか」

女は「糸を回すからさ」と返事をしました。

すると王子はびっくりして言いました「それなら、もう決して、私の美しい花嫁には、つむぎ車を触れさすまい」

それで花嫁は、あのいやな糸くりをしなくてもよいことになりました。

 

成功への知恵3.プロに任せろ。その方が、安く済むのであれば、なおさらだ。(企業の人事・労務担当者は社会保険労務士の活用を常に考えるべきだ。)

成功への知恵4.不器用な正直者よりも要領のいい怠け者が出世する。

成功への知恵5.美しい女はたいてい信用できない。

 

怠け者の娘が、怠け者のまま、こんなにハッピーになってしまうことにも驚くけれど、登場人物皆すべからくハッピーになってしまうところは、この怠け娘の人徳のせいなのでしょうか。

 

グリム童話の奥の深さにはほんとに驚かされます。

 

 

 

 

 

 

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