この映画を観る⑤ (20030615)
たまにはフランス映画もいいの巻
映画と言えばアメリカ映画、とりわけハリウッド映画が全盛だけど、戦前や1950年代は日本映画も頑張っていた。
残念ながら戦争で日本映画の多くは焼けちゃったため、運よく残った一部の作品しか見ることはできない。
実はフランス映画も1930年代にたくさんの傑作・名作がある。
ルネ・クレール、ジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴエ、ジャック・フェデー、なんて名匠、巨匠がいて、作品もたくさん残っているから、僕も20歳前後に八重洲スター座や京橋の国立近代フィルムセンターとかによく観に行った。(そう言えば国立近代フィルムセンターは1980年代に火事にあって、貴重なフィルムがたくさん焼けたらしい。)
フランス映画は50年代後半には「ヌーベル・バーグ」で世界中をアッと言わせることになり、また全盛期を迎えることになる。
実のところ、僕はいわゆるフランス・ヌーベル・バーグ(英語にするとニュー・ウェーブ、ようするに「新しい波」)の作品はそれほど好きになれなかったし、今では印象も薄い。
ジャン・リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、アラン・レネ、クロード・シャブロルといった有名監督達の作品は多分に実験的要素が強く、僕が初めて観た1980年前後には、残念ながらとっくに斬新的な作品ではなくて、新鮮味も感じられなかった。
さて、ここで僕の好きなフランス映画を10本挙げてみよう。(古い順)
1.女だけの都(1935年/監督ジャック・フェデー)
2.天井桟敷の人々(1945年/監督マルセル・カルネ)
3.オルフェ(1950年/監督ジャン・コクトー)
4.恐怖の報酬(1952年/監督アンリ・ジョルジョ・クルーゾー)
5.太陽がいっぱい(1960年/監督ルネ・クレマン)
6.シェルブールの雨傘(1964年/監督ジャック・ドゥミ)
7.男と女(1966年/クロード・ルルーシュ)
8.汚れた血(1986年/レオス・カラックス)
9.髪結いの亭主(1990年/監督パトリス・ルコント)
10.アメリ(2001年/監督ジャン・ピエール・ジュネ)
1~4までは凄く古いし、観ていない方も多いかもしれない。
その中でも「オルフェ」は必見。
主演のジャン・マレーは当時の美男の代名詞だった。
余談になるけどフランス美男俳優と言えば、アラン・ドロンが有名だけど、初代はジャン・マレー、二代目がジェラール・フィリップ、ドロンは三代目だ。
上の10本の中にはジェラール・フィリップの出演作はないけど、「夜ごとの美女(1952年)」、「モンパルナスの灯(1958年)」なんかがお薦めだ。
特に「モンパルナスの灯」には僕の好きな女優のアヌーク・エーメが出ていてなお嬉しい。この映画は36歳の若さで亡くなった画家モジリアニの伝記映画だけど、主演のジェラール・フィリップも、不思議なことに1959年に36歳の若さで死んでしまった。
話を「オルフェ」に戻すけど、まぁ監督のジャン・コクトーが天才だということがわかる1本です。とにかく観てください。
5以降の中でも特に「汚れた血」には衝撃を受けた。
フランス映画界には、突然レオス・カラックスみたいな天才が現れるからおもしろい
彼はデビュー作の「ボーイ・ミーツ・ガール(1983年)」も素晴らしかったけど、僕はこの「汚れた血」が一番好きだ。
フランス映画にはアメリカ映画にはない面白さがある。
2001年の話題作「アメリ」は、本当にフランス映画らしいフランス映画の傑作だった。
同じヨーロッパでもイタリア映画の巨匠達の作品は重厚な文学的な味わいがあるけど、フランス映画の天才達の作品には、洒落たセンスが光っていて、絵画的な味わいがある。
監督に天才を感じるんだけど、「巨匠」と呼ぶにはちょっと作品が軽いかなぁと。
この独特の軽さがフランス映画の特徴だと僕は思っているんだけど、どうだろう。
AVS Document Converter で作成された